出版年月:1991年12月
著者:山田 隆
出版社:現代書林
本書は、アトピー性皮膚炎の治療法として温泉の効能に着目し、脱ステロイドと組み合わせる事で皮膚症状を寛解に導いた実例を、写真で示したものです。
1991年という年代で、これだけの知見を見出していた事は、特筆に値すると思います。
まだこの頃は、脱ステロイドに関する知見は十分ではなく、体系化されているとは言えない状況だったようです。 (1,2)
しかし本書では、明確に脱ステロイドが必要である事を謳い、温泉治療をうまく組み合わせる事で、改善前後をカラー写真で示しています。アトピー性皮膚炎の皮疹の程度は、いかなる数値データよりも、見た目(写真)が最もよく判別する事ができます。
その改善の程度を言葉でごまかすのではなく、最も分かりやすい写真で示しており、非常に説得力があります。
ただしその改善は、脱ステロイドによってもたらされたのか、脱ステロイドに温泉療法が組み合わさる事によってもたらされたのか、は冷静に判断する必要があると思います。
事実、本書中でも、”アトピー性皮膚炎が「治る」ための、ある共通した条件を満たせば、それらの症状は普通のお風呂でも明らかに改善していくという事実であった。”(本書p196より抜粋)としています。ある共通した条件、とは本書中では記載がありませんが、これが脱ステロイドの事なのでしょう。自ら、温泉は必ずしも必要ではない事を明記しているのです。
著者の山田隆氏の所属は、ニチエーメディカルセンターとなっており、これは後の日本オムバスの事のようです。現時点(2019/11)でも山田隆氏の名前は、日本オムバスのHPから代表取締役に見つける事ができます。また、本書中で会長として、小川秀夫氏の記載もなされています。
私は、脱ステロイドに踏み切った後で、脱ステ関係の情報を調べる中で、日本オムバスの存在を知りましたが、1990年代にアトピー治療を行う医師達の間では、かなり有名であったようです。 (3)
当時の脱ステロイドの情報が少ない混沌とした中においては、脱ステロイドの必要性を明確に訴える日本オムバスの治療法は、一定数の患者を助けた事は紛れもない事実でしょう。ただ、その費用が年間200万円弱とかなり高額であり、患者達の生活を圧迫した事もまた事実であると思われます。
日本オムバスの小川秀夫氏、また山田隆氏は、医師ではないながら脱ステロイドの重要性を見出し、ビジネスとして成立させるため温泉を組み合わせながらも、多くの患者を救ったという点においては、十分に評価されるべきと考えます。
私は日本オムバスの温泉療法は費用面を抜きに考えたとしても利用しませんが、その事業をただ無思慮に非難だけをされるべき対象ではない、と思います。
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