【文献】アトピー性皮膚炎患者1000人の証言

書籍

出版年月:2008年11月

著者:安藤 直子

出版社:子どもの未来社

本書は、生命科学・食品毒性学の研究者である著者が、1980年代の10代後半の頃から顔に使用し始めたステロイド外用剤について、後の自身のステロイド離脱経験を振り返り、その上で1000人以上の成人アトピー性皮膚炎患者のアンケート結果・ヒアリング結果をまとめたものです。

本書で最も注目した点は、最後の「終わりに」の項で、著者がプロトピックの治験を受けていた都内最高峰のT大学附属病院の元主治医に、ステロイド離脱が一段落してきた段階で再度対面している場面です。その元主治医は、標準治療の中心的な立場にある、権威ある医師だったようです。その際、著者は勇気を振り絞り、「プロトピックやステロイドを使えなくなった・・」と直接訴えています。

その一言を言いかけた時に、元主治医はまるで著者が突然存在しなくなったかのように、もう一人の医師に向かって、全然違う話を始めてしまったと記録されています。ステロイド外用剤やプロトピックの治療から離脱する患者達は、存在しなかった事にしてしまう、その医師自身の考えが如実に現れた例だと思われます。

脱ステロイドに踏み切った患者たちは、ステロイド外用剤を中心とした標準治療を押し進める皮膚科医に対して信頼感を失い、これまで長らく受診していた主治医に直接、ステロイド外用剤の問題点・副作用などを訴えない傾向があるように思います。医師に患者の思いを伝えても、まともに取り合ってもらえない事をよく理解しているからです。

私も、ステロイド外用剤で徐々に抑えきれなくなってきた皮疹を抱えて、様々な皮膚科を受診しましたが、いずれの医師にも「ステロイド外用剤をしっかり塗るように」と言われるばかりで、それ以外の治療法を示される事はありませんでした。

そのため、自分なりにこの病態の事を調べ、ステロイド依存という可能性を知り、脱ステロイドに踏み切りました。その際には、皮膚科医を受診していません。もう既に、皮膚科医には何も期待しなくなっていたためです。

このような脱ステロイドの経過を辿った場合には、患者は一人、リバウンドの苦しみと戦い続ける事になります。基本的にはそれでも少しずつ良くはなりますが、感染症等は、やはり皮膚科医の診察と投薬が必要になります。そういった意味でも、脱ステロイド患者を否定し、受け入れない現状は、大きな問題を抱えていると言えます。

患者が 皮膚科医にステロイド外用剤の問題点を訴えた際に、脱ステロイドという提案がなされる日がいつか来る事を、信じ続けたいと思います。

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